柳澤 私が代を務めている健康テザイン研究会が原寸大のモデル病室を施工し,公開展示したことがあります。医療関係者は図面では病案の細部までチェックしにくいし,建築設計者は建築細部をカタログだけで選びがちになる。関係企業は使用者である高齢者や患者さんの声を直接聞いたことがない。こうした点を補うには,実物モデルが最も分かりやすいのです。しかも,関係企業の情報交換と自社製品の改良へのきっかけにもつながります。
この4床のモデル病室は,どのベッドの近くにも窓があるように部屋の形を十角形にしてあり,ベッドの角度をふることで患者用の椅子を置くスペースを確保しています。また,リラックスできるように間接照明にするなど,様々な提案を試みましたが,注目していただきたいのは,通常の四角形の病室と床面積および1床あたりの面積がほぼ同じという点です。
もちろん,スペースの問題が解決されても,窓が増える,間接照明にする,ハイバックでオットマンが付いた椅子をベッドの数だけ揃えるということになれば,コストがかさんでいきます。4床案で差額料金を設定するのはなかなか難しいようですし,4床室が良くなると個室に入る人がいなくなり経営上困という話もあります。私個人としては,4床室でも個室でも環境に見合った負担がなければならないと思っています。
また,病院・福祉施設の経営努力も欠かせません。今後は「患者に対するサービス水準を高めつつ,経営を合理化していく」必要があるでしょう。
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