コンペ要綱を取り上げた理由ファシリティマネージャーは施主と設計者の間に立って、施主が如何なる施設経営を行う為に設計者から専門的な提案を期待すべきか、両者の橋渡しを行なうべきだと考える。まさにコンペ要綱はその橋渡しの具体例なのである。
コンペ要綱は「企画段階の設計条件」を建築家に示し、良い建築設計の提案を期待するものである。コンペには企画段階の提案まで期待するプロポーザル形式のものや、建築家だけでなく、運営主体になりうる組織に対して運営の提案まで求める事業コンペ形式をとるものもあるが、ここでは建築家に建築設計の専門分野に限定して設計を提案してもらう、ごく通常のコンペを想定している。
企画から運営
コンペ要綱には、施設ができて運営された時に問題が起こらないよう、運営上の注意事項が含まれる。運営まで見通して企画を立案することは、まさに川上の企画から川下の運営までを総合調整するFMのポイントであり、良いコンペ要綱をまとめることが、FMのあり方を貝体的に示すことになるのである。職員と業務と場の3者を総合調整するのがFMであり、良いコンペ要綱は3者の総合調整の状況を示した上で、建築家に場の最適解を提案してもらうのである。
POE調査
最近、アメリカのコンペ要綱に、ユーザーの要求を代弁するPOE調査(施設の入居者による評価)の結果が加えられるケースが増加している。類似施設のユーザーの要求を把握すれば、完成後の施設が活用されるはずだというFMの考え方である。ユーザーとサプライヤーと設計者、3者の間に立ち、過不足なく情報を伝達するのがファシリティマネジャーの役割であるから、まさにコンペ要綱と通じるのである。ここで言うファシリティマネジャーとは、組織に属した建築家ではなく、コンサルタントとして事業者と設計者(建築家)の中間に立つ専門家であると仮定している。
設計条件
コンペ要綱の貝体的な内容としては、施設完成後に入居するだろうユーザーの要求と、運営主体であるサプライヤーによるサービス提供のレベルとが示される。コンペ応募者である建築家が自由に提案する部分は要綱に盛り込む必要はないが、入居するユーザーの生活内容や職員の業務内容は設計条件として要綱に盛り込まなくてはならない。
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