2000.10   JFMA
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あかり

客にサーどスする施設・変化する施設にFMが必要

 私は「病院にこそFMが必要だ」と主張してきた。今回は少々言い方を変えて「客にサービスする施設にこそFMが必要だ」と「変化する施設にこそFMが必要だ」という言い方をして見たい。
 「客にサービスする施設」では客が施設に満足することがFMの目的であり、職員は職場や運営方法と相互調整を計り客が満足する為の方法となる。職員が快適に作業できると客に良いサービスを提供出来るだろうが、それは方法であって直接の目的ではない。最近、施設利用者の満足度調査が行われているが、利用者として客と職員が混同されていることが多い。目的的な調査はあくまで客の満足度なのではないか。
 FMをPeople・Place・Processの調和ある関連であるとして、重なる3つの円で説明しているが、客にサービスする施設ではStaff・P1ace・Processを調和させて客へのサービス水準を向上させるのだと認識したい。
 実は病院を客にサービスする施設だと認識することが容易ではない。病院職員には「患者の満足」によって対価を得ているという認識が少なかった。病気を治してあげ、決められた保険診療費が入ってくるという感覚であろう。日本の病院に患者を癒す環境が不足し、サービス水準が設定されず、競争原理が働いていなかったのは、客に対するサービス精神が不足していたのではないか?「病院にこそFMが必要だ」と主張してきたのは、病院は客にサービスする施設であり、サービス水準を設定することが必要だという私の主張が背景にあったのである。もっと患者が環境やサービスで病院を選択するようになれば状況は変わってこよう。
 話は変わるが、鉄道駅は100年でも使えるが空港は20年も使えれば上等だという常識がある。変化の激しい施設として空港と病院をあげる人がいる。「変革(Change)が烈しいと、リスク(生じ、意思決定(Decision Making)を必要とする。これに従って運営主体(Management Presence)をつくり、支持機構(Support Systems)を整備しなければならない。しかし、変化がなければ全て必要ない」とFMのポイントを教えてくれたのは、1984年に訪問したFMIであった。変化があると従来通りという訳にいかず、組織的に適切な対応を決める体制が必要になるのである。コンピュータの導入で烈しい変化を要求されていた当時のオフィスはFMを必要としていたが、今日のオフィスはどれだけの変化があるのだろうか?さしたる変化がなければ、さほどFMは必要ない。しかし、病院を取り巻く今日の変化はすさまじい。加速する人口の高齢化・高騰する医療費・近づく医療法大改正・高度化する医療技術・医療情報の氾濫・多くの病院に襲い掛かる経営危機・高まる患者の権利意識・院内感染の危険・要求が高まる危機管理体制など、あげればきりがない。院長・事務長はじめ病院のスタッフが取り組まなければならない変化する課題は限りなく多い。例えば院内感染を取り上げてみると、どこに危険があるかの現状の問題把握から対応方法の決定を誰がやるか、経済的な処理はどうするか、建築的な改造や運営マニアルの設定など施設に絡まる課題は少なくない。病院の専門的なFMが必要になるのである。
 客にサービスしようと認識した病院、変化が烈しいと認識した病院は、まさにFMを必要としている。一方、膨大な客を満足させなくてはならず、客の質や量が変わり飛行機も変わる空港も、まさにFMを必要としているのである。従来、国公立の施設はサービス精神が乏しく経営感覚も不足していた。国立大学が独立行政法人化する大変化などをきっかけに、公的施設では広くFMを必要にすることになろう。

(柳澤 忠)

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